あなたのヒロインではないけれど






「すみません、いきなり呼び出してしまいまして」

「……はあ」


……なぜ、こんなことになっているんだろう?


アンティークものの家具や調度品が多いシックなカフェで、氷上さんと向かい合いながらぼんやりと朝の出来事を思い出した。





朝の7時と早い時間に電話をしてきたのは氷上さん本人で。どうして教えてもいない私の番号に掛けられたかと言えば、親友の真湖が「いざというとき連絡先を知らないと困りますよね~」と、“気を利かせて”くれたかららしい。


(真湖……絶対後でチョコバナナクレープ奢らせるからね!)


私からすれば、余計というより大きなお世話な真湖の気遣いに、今度時間が合えば駅前のクレープ屋に引っ張って行こうという決心をさせた。


“柏木さんからお休みとお伺いしまして。もしお時間があれば今日は早めに終われますから、さっそくお話させていただけますか?”


氷上さんは至って真面目にお話している。からかったりイタズラとは思えない……けど。やっぱりやる気になれないのか正直な気持ち。


お店でいた時だけでもあれだけどぎまぎしたのに、二人きりで会うなんて……と躊躇したけど。


氷上さんは“商品企画の人間も連れていきますから”と話され、いくぶんか緊張が和らいだ。