あなたのヒロインではないけれど




時折、スケッチブックのキャラを元にぬいぐるみを縫ったりもした。

何年も続けるうちにさすがに上達して、寄贈品バザーなんかのチャリティで売る機会も増えたけど。自分が縫ったことを明かすのが恥ずかしい上に怖くて、文化祭なんかの出品はいつも無難な作品に落ち着いてた。


「これもダメかな……」


昨夜、最新のスケッチを元にフェルトで新しいぬいぐるみを縫った。

何も考えたくなくて、型紙もなしに裁断から始めるなんて無茶をしてしまった。


当然縫い上げたものの形は歪で、人前に出せるものじゃない。それを手にして思わずため息をつく。


「……どうして……承諾しちゃったんだろ」


テーブルの上には氷上さんの名刺も置いてある。連絡先のケータイ番号はあるけど、社用だろうし。第一私から連絡する理由はない。


(……たぶん、気まぐれに声をかけただけだよね。きっとめぼしい人はたくさんいる……)


フェルトで出来た馬だか牛だかわからない生き物をテーブルに戻すと、片付ける為にスケッチブックを手にした瞬間――傍らのスマホが突然震えだして飛び上がりそうになった。


(こんな朝から……真湖かな?)


また、勤務スケジュール忘れたのかな? と何気なく出て。


液晶画面に出てる慣れない番号に眉を寄せた。


(知らない番号だけど……間違いだったらちゃんと教えてあげた方がいいよね)


画面の通話ボタンを押した3秒後――出たことを後悔する羽目になった。