桜の花が散る中で、時が止まる。
まるで、20数年前の出会いをそっくり繰り返したようだった。
ただ、一つ違うことは……
私が、彼に抱きしめられたということ。
「……会いたかった」
おそらく、それは真実の想い。彼の万感が籠ったたったひと言は――私の胸を激しく揺さぶるものだったから。
けれど、と私は思う。
「なぜ……ここに? どうして今なんですか?」
困惑する気持ちをそのまま口にすると……彼は。貴明さんは一度体を離して私を見下ろした。
「あのままだと会いにいけなかったんだ。
最初はぼくもずいぶん捜そうと躍起になったけれど……ゆみが叱りつけてくれたんだ。
“ただ依存したいだけなら二度と会うな。あんたは無い物ねだりをするただの子ども。会いたいなら、ちゃんと大人の男になれ”とずいぶん手厳しく言われて……ようやく目が覚めたんだ。ずっと君に辛い想いをさせていたと」
「ゆみ先輩が……」
彼女らしい貴明さんを理解した叱責に、微笑ましくもうらやましい気持ちになる。やっぱり彼女は貴明さんの一番の理解者だと。
「ごめん……ぼくは本当に何も解っていない子どもだった。君の側が心地いいからと……確かな約束もせずにそばに置いたくせに、結局何も報いることはしなかったのだから」
自虐的に笑う貴明さんに、私は首を横に振った。
「違います! 私は……私は望んであなたのそばにいたんです。何も要りませんでした……ただ、それだけでしあわせだったんですから」



