真湖が「彼」と呼ぶのが、誰を指すのか。ずっと友達をしていたなら解る。
私がずっと報われない想いに苦しみ、忘れようとしながらも結局未だに忘れていないひとのことだ。
真弓ちゃんがボールを手に樹の下で遊び出したのを見計らい、真湖は声を抑えて私に訊いてきた。
「……あれから5年経つけど……忘れていないんでしょう?」
「……うん」
5年前にN県に転勤になって以来、真湖はずっとずっとその原因には触れないでいてくれた。たぶん私が無理をして限界に来たのを察していたんだと思う。
転勤して直ぐの休みの日に顔を見に来てくれたし、結婚で忙しい時すら月1で会いに来てくれて。どれだけ励まされただろう。
さすがに真弓ちゃんの妊娠出産時は半年ほど絶えたけど。ほどなく謙吾さんがN県に転勤になったから、と単身赴任でなく家族ごとの引っ越しを選んだのも、私のためだと判って。申し訳ないながらも、真湖のその想いに胸が熱くなった。
そんな情に厚い一番の友達に、何を隠すことがあるんだろう。
他の誰に隠しても、真湖にだけは素直になろうと決めてた。
「忘れようって……一生懸命になったし、実際数少ないお誘いにOKして……いい人だと付き合おうとしたけどダメだった。
どうしても、何をしても彼が忘れられない。
だったら、もう無理に忘れようとしないと決めたの。
たぶん……きっとあれが最初で最後の……一生に一度しかできない恋だから」



