「そういえば、今日はずいぶんお洒落じゃない。もしかしてデート?」
「さあ、どうでしょうか?」
やっぱり普段地味にしてる人間がたまにおしゃれをすると目立つのか、こんなことを訊かれるのに慣れてしまってる自分がいた。
「ご想像にお任せしますね」
「あらら、上手くかわされちゃったわ。だけど、ずいぶん意味深ね」
店長が探るような視線を寄越したけど、私は曖昧に笑うに留めておいた。
「あら~、結実さん! スッゴいきれいにしてるでないの」
事務室に入ってきた私と同年代のアヤメさんが、眼鏡を光らせ近づいてきた。
「こらあ、男のためでないかね? でなきゃわたしが許さんわ~」
眼鏡のフレームをクイッと上げるアヤメさんは、こちらで初めて出来た友達。毎日ランチを一緒にしてるし、週一で遊びに行く。いろいろと相談に乗ってくれるし、地元との橋渡しもしてくれた。
彼女がいてくれたから、思ったよりも早く馴染むことができたんだ。
にしても、世話焼きおばちゃんみたいな色恋ごとに目がないのだけは勘弁して欲しい。何せ、アヤメさんのお母さんはお見合いの達人と呼ばれ、合計100組近い夫婦を誕生させたと伝説的な人物。その血を引いた彼女がどんな人かは推して知るべし。
私に恋人が居ないと知ると、毎週の様にお見合い写真を持ってくるのは勘弁してください。



