あなたのヒロインではないけれど






「にゃあ!」

「ごめんね、キャンディ……今、ご飯あげるから」


玄関に入った途端に飛び付いてきたキャンディを抱き上げ、キッチンに向かうけど。


……その惨状に、驚くしかなかった。


ゴミ箱にはレトルトやインスタントのパッケージが溢れて、シンクには食べ掛けのカップ焼きそば。かじりかけの菓子パン……飲みかけの缶ビール。


あんな多忙な毎日だったのに、こんな食生活じゃ風邪もひどくなる。


キャンディにご飯をあげた後、キッチンを手早く片付けて雑炊を作る。


あまり食欲がなくても薬は飲まなきゃいけないから……リンゴを切ったのと擦りリンゴも用意をした。 後はスポーツドリンクと……冷却シートと。


一通り用意をしてから、氷上さんの寝室に向かう。


足音に気をつけながらドアを開いて部屋を覗くと……ベッドの上で毛布にくるまる彼が見えた。


かなり熱が上がって苦しいのか、呼吸がつらそうで時折咳き込んでる。用意した濡れたタオルと桶を手に、そっとベッドに近づいた。


熱がどれだけかを看るために額に手をつけると、氷上さんは目を開いたけど。ぼんやりした顔で……たぶん高熱で意識が朦朧としてる。


「……ゆ……み?」


呼ばれた名前に、一気に気分は重くなる。


(やっぱりこんな時でも……あなたはあの人を求めるんだ)


わかっていたのに……やっぱり辛いな。


でも、今彼を助けられるのは私だけ。


ゆみ先輩でも、何でもいい。私が彼女の代わりに……あなたをよくしてあげたい。


そう決意をすると、まずは彼の汗をタオルで拭った。


「大丈夫……私がいるから……貴明」