“今日はごちそうさま。いろいろ話せて楽しかった”


ゆみ先輩から来たメッセージが液晶画面に表示されてる。次第に文字がぼやけて……熱いものが頬を伝い画面に落ちた。


――やっぱり……ダメだ。


私じゃ、敵わない。


あんなにも魅力的な人の代わりなんて……なれないし、無理だ。


ゆみ先輩は私に託すと言っていたけれど……単なる仕事仲間に出来ることなんてたかが知れてる。


こんなちんちくりんで何の魅力もない小娘……いくらか努力してやっと人並みな私に、氷上さんの傷が癒せるなんて思えないよ。


「……もう……ダメだ……限界……」


出会いのきっかけになった薄汚れたクマを抱きしめながら、声を押し殺し涙を流す。


もう、会わないようにしよう。


氷上さんに相応しい人は私じゃない。私なんかじゃなかった。


転勤を……受けよう。


何百kmも離れれば会うこともない。


顔を見なければ……氷上さんはすぐに私を忘れる。そして……きっと相応しい人を見つけて愛するだろう。


私も……忘れる。忘れたい……。


お願いだから……誰か。彼を忘れさせて。


一晩流し続けた涙を吸ったクマは、雨に濡れたようにずっしりと重くなっていた。