「デイヴィッドは貧しい人に無料や格安で治療を施すような善人でね……犯人を憎む私に言い聞かせてくれたの。罪を犯した子どもたちも、きちんとした食事と着るもの住む場所があればそんなことはしない……って。彼に感化された訳じゃないけど……子どもたちを取り巻く環境について考えることが多くなって。やがて、デイヴィッドの言うことを理解できるようになったのがハイスクール時代」


それから、ゆみ先輩はボランティアを始めて。子どもを取り巻く貧困や虐待や様々な問題を間近に見て、一朝一夕で解決することでないと痛感したらしい。


「ハイスクールを出た後はアルバイトをしながらボランティアに精を出したわ。でも、やっぱり二人では限界があって……N.Y.に拠点を移して、団体を立ち上げたの。
幼い夢はまだ忘れてはないけど……お腹を空かせた子どもには、ぬいぐるみよりもパンが必要だと気付いた。だから……」


それ以上は、語らなかったけど。きっとゆみ先輩は氷上さんと相容れない道を選んだのだと思う。


「……貴明には申し訳ないと思う。けれど……私は彼のことはもう兄弟くらいにしか思えないの」


やっぱり……


ゆみ先輩は、氷上さんの。幼なじみの想いに気づいてたんだ。なのに……応えられないとハッキリ言い切った。


だから、私は。


愚かだけど、ゆみ先輩に詰め寄った。


「氷上さんは……今でもあなたを……ずっと呼ぶほど……なのに。駄目なんですか? 彼にはあなたしかいないのに……」