「実はね、私はアニメーターになりたかったの。当然父をはじめ回りは猛反対。幼い頃は笑って済まされたけど、さすがに中学卒業後の進路でアニメーター志望は洒落にならない……って勘当されかねないくらいの勢いだったの」
ゆみ先輩の口から直接語られる昔ばなしは、きっと氷上さんの過去に繋がってる。緊張しながら固唾を飲んで聞き入ってた。
「でも、あまりの頑固さに父はとうとう折れてくれた。そこで、どうせ夢を叶えるなら徹底的に大きな夢を掴め……って。本番で試してみろと、渡米を勧めてくれた。叔父さんがロスで仕事をしてるから、下宿をして実力を磨けって。
私の夢はアメリカにある世界的に有名なアニメ会社に入ることだったから、この話は願ったり叶ったりだった。
憶えてるかしら? 私……世界に愛されるキャラクターを生み出したいって夢があったの。
アメリカ行きは本当に嬉しかったし。夢を叶えるチャンスと思ってた……でも」
そこで、一度言葉を切るとゆみ先輩は何故か上着を脱ぐ。そして……お腹にあるものを見せてくれた。
まだうっすら残る痕が痛々しい、大きな傷を。
「うっかり迷い込んだロスのダウンタウンで、ストリートキッズに襲われたの。貴明が庇ってくれなかったら……もしかすると死んでたかもしれない」
予想外の衝撃的な話に、思わず息を飲んだ。



