「改めて、自己紹介。私は有馬 友美。今はN.Y.に住んで子どもの福祉に関する仕事をしてるの、よろしく」
「わ、私は……鵜野 結実です。雑貨店の店員です」
「結実ちゃん、ね。名前が似てるなんて奇遇だけど、何だか嬉しい。ずっとあなたとお話したいと思ってたから」
「え……そうなんですか?」
「うん。小学と中学一緒だったでしょう? 時たま見かけたけど、何だか遠慮がちに見えたから……無理には話しかけられなくてね。
でも、こうして話せてラッキー! 貴明に感謝したいくらい」
ごく自然に氷上さんを呼び捨てにした気安さに、いちいち胸が痛む。それが許せなくて、もう気にするなと自分に言い聞かせた。
「あの……先輩は、回りにたくさんの人がいらっしゃいましたから」
「そんなの、向こうから勝手に寄ってきただけ。こっちは頼んでもないのに。実を言うと結構ウザかったんだ」
……うわ、今だから知るゆみ先輩の本音に。何だか気が抜けてしまいました。
「なんかさぁ、私のイメージを勝手に作り上げて。それを演じる期待を押し付けてくるの。バカらしいったら。私は、私。それ以外できないってのにね」
「そう……ですね」
きっと、ゆみ先輩も大変だったんだと思う。地域で一二を争う総合病院の跡取りとして、医者になって跡を継ぐか医者の婿をもらうか。その二つの選択肢しか無かったんだろう。
だけど、ゆみ先輩は潔く家を飛び出す道を選んだんだ。 しかも、遠い異国の地へと渡って。



