氷上さんが皐月家……つまり、SS社の創業一家の長男というのを初めて知った。
どうして氷上と母方の名前を名乗っていたのかは知らない。だけど、洋介おじいちゃんが似ていたのは氷上さんだったから、より親しみを持ってたんだ。
偶然とはいえ凄い。だけど……私は。おばあちゃんのように、氷上さんと“お友達”になれるのかな?
恋したことを忘れて……ただの親しい他人として。あんなふうに接することができる?
(ううん、無理だ)
おばあちゃんはきっと洋介おじいちゃんの正体は知っていただろうけど、あえて私に教えなかったのはおばあちゃん自身さして重要で無かったからだろう。
おばあちゃんと洋介おじいちゃんは身分や家名や損得で繋がった訳でなくて、長い時を過ごした縁と友情と信頼があるから。
昔何があったかは知らないけれど、穏やかで静かで心地よい気取らない関係。氷上さんとそんな風には……今は、とてもなれない。
何もないことにするには不可能なほど、この1年近くで私の気持ちが大きく育ち過ぎた。
ましてや……氷上さんにはゆみ先輩がいて。彼は皐月家の御曹司。いずれSS社の重要な役割を担っていく……。
病院の令嬢であるゆみ先輩こそ将来の社長夫人に相応しい。
そう、私はただの平社員でその辺にいる女の子。教養も身分も何もない。
やっぱり、彼はとても私には手が届くひとじゃなかった……。



