それよりも、と私はゴシゴシと涙を拭うと。ネイサンさんに向かってひとつだけお願いすることにした。
「あの……ネイサンさん。あなたが私を嫌っているのはわかってはいます」
「ふうん、一応嫌われてる自覚はあるんだネ?そこまでバカじゃないんだ」
心底バカにしたような冷たい瞳でネイサンさんは私をちらっと見た後、無関心そうに他所を向いた。
ズキッと胸が痛むけど、これは私が何も解ってなかった幼さが招いたこと。甘んじて受け入れなくては、何も成長しない。
だから、敢えて徹底的に嫌われている相手にこう頼み込んだ。
「私がいるだけで不愉快なのに、今までお付き合いさせて申し訳ありません……ですが。不躾過ぎるお願いですけど……もう少し、仲良くしていただけますか?」
「ハ?」
何を言ってるのか、とでも言いたいのか。ネイサンさんが両目をこれ以上ないほど見開いていた。
「氷上さんを……心配させたくないんです。私とあなたの仲が上手くいってないと勘づいてるみたいで。わ、私はどう思われても構いませんが……あなたと氷上さんの仲が……こんな私のせいで少しでもギクシャクしたりしたら嫌なんです。だから……図々しいお願いだとは承知してますが……せめて氷上さんの前では、今までよりもっとフレンドリーにお願いできますか?お、お礼はしますから……」
必死に頼み込んだそれを、ネイサンさんは「クレイジーだネ」と当然のように吐き捨てたけど。どうしても、譲れない思いがあって。
不承不承彼を承諾させるのに、結局一時間近く掛かってしまった。



