だけど……。
いきなり手首を取られたと気付いた時には、阿部さんが私の右手薬指から指輪を引き抜こうとしていた。
「これはわたしの! わたしがもらうべきだったものだから、返してもらうわよ」
「や……やめて。やめてください!」
それだけは……と私は必死に指輪を守ろうとした。
もう、氷上さんとは会わないから。氷上さんと関わらないから。これだけは……唯一の思い出として持っていたいのに。
けれど、真湖と変わらないくらいの長身の阿部さんと、頭ひとつぶん低い身長の私とでは。結果は火を見るより明らかで……阿部さんは、得意満面に指輪を手にしてた。
「ほら、見なさい。指輪はやっぱり私の左薬指にぴったり……結局、あんたはただの遊びで本命はわたしだったのよ」
ぴったり填まった薬指をこれ見よがしに見せつけてくる阿部さんは、そのまま颯爽と立ち去ろうとしたけど。
その行く手を、金色に輝く髪を持つ人が阻んだ。
「Hi. ミズ·アベ。今日もBeautifulダネ」
「あ、あらライアン……今日もお世辞が上手いこと」
ふふ、と笑う阿部さんは心なしか頬がほんのり染まってる。だけど……
そのまま去ろうとした阿部さんの進路を左手で阻んだ彼は、にこやかにこう告げた。
「君は顔がBeautifulだけど……残念だけど、心はそうじゃないみたいダネ。タカアキとのこと……ウソを並べ立てないでくれる? 君が一方的に追いかけてストーカー紛いの行動してたの……警察や人事にチクってもイイかな?」
薄笑いを浮かべたネイサンさんが何かを阿部さんに見せると、彼女は短い悲鳴を上げてその場で崩れ落ちた。
「……ユーミのリング、ちゃんと返してあげてネ? あ、もちろんごめんなさいと謝るんだよ」



