「……そうだったんだ」
長い長い話を聞いた真湖は、小さく息を吐いてグラスのレモン水を飲み込む。
ずっと喋っていた私も、彼女に倣って喉を湿らせた。
「……あの氷上さんが初恋の人だったとはね。だから、結実はあんなに慌ててメイクを憶えたかったわけか」
「うん……」
カラン、とグラスの氷が崩れる。不安な気持ちを代弁するように、パチンと泡がはぜた。
シックな設えの店内にはジャズが流れていて、落ち着いた雰囲気。若い世代はあまり来ないだろう、と私たちが通い慣れた空気は普段なら心地よいけれど。今は少しだけ不安を煽られる。
「“ゆみ”だっけ……その女は。確かに、ライアンも知ってるみたいね」
「え……」
真湖から意外な名前が出て、なぜと首を傾げると。彼女はふん! と鼻を鳴らす。
「花見で同じアニメが好きって判ったからね、いわば趣味友ってとこ。たまにメールとかメッセージのやりとりする位だけどさ。あんたの仕事仲間がどんな人間か心配で、いろいろと訊いたの」
「真湖……」
意外な繋がりと意外な友達の優しさに、胸が熱くなりジンと来るものがあった。



