あなたのヒロインではないけれど




「アクアシリーズだけど、どうやら良い感触が得られそうだよ」


午後9時過ぎ。氷上さんと一緒に夕食を食べていると、彼がそんな嬉しい話をしてくれた。

アクアシリーズはまだ仮の通称で、アースィが海の国を冒険する時の設定を元にしたシリーズ。

一番はじめのベーシックなシリーズはクリスマス商戦の発売だから、9月末の今はまだ当然数字が出てないけど。春に合わせて発売したいから、ということで企画自体は既に動いてた。

ただ、さすがに今の仕事と平行して動かすのは難しくて。他の部署から引き抜いた人材で別の担当するチームを作ったらしい。


私はあくまでもミラージュからの派遣だから、そのチームとは直接関わることはあまりないだろうという話だった。


「よかった……頑張ったかいがありましたね」


スプーンを置いてホッとしていると、突然テーブルに置かれた手に暖かさを感じた。


氷上さんが、私の手に大きな手を重ねてきたからだった。


「ありがとう……結実さん。そこまで喜んでもらえたら、僕ももっと頑張れそうだ。君の夢を叶えるためにも、一緒に頑張ろう」


顔が、首まで熱い。呼吸が苦しい。絶対真っ赤になってる顔を見られるのが恥ずかしくて、うつむきながらやっと返事をした。


「……はい」


そう返事をした瞬間、わずかに力が籠り指がからめられた。