あなたのヒロインではないけれど






イルカショーの後はバンドウイルカの泳ぐ水槽を見学へ。他にもたくさんの種類の動物や海の生物がいて、壁いっぱいが水槽になってる海洋館はエイや小さなサメが泳いでいて迫力満点。


それぞれ海の中の環境を忠実に再現しているから、青い壁紙や通路の照明も相まって海の中にいるよう。


中にはトンネルになった巨大水槽もあって、頭上を魚の群れが泳いでいく。驚く度に歓声を上げてしまってごめんなさい。でも、本当に新鮮で楽しくて。少々はしゃいでしまいました。


「わぁ! あんなふうに泳ぐんですね。それと、鰹が泳ぎつづけないといけないなんて知りませんでした」

「鰹やマグロは口から酸素を取り入れないといけないって……僕も初めて知ったよ。エラ呼吸じゃなかったんだな」


そんなふうに話し合いながら、ゆったりとしたペースで歩き続ける。見るものすべてが面白くて、楽しくて。どんどん世界が広がっていく。


いつの間にか、氷上さんとごく普通に会話をしていたと気付いたのは、順路の終わりごろだった。


「そろそろ、お昼ご飯にでもしようか? 結実はなにか食べたいものがある?」

「え、えと……た、貴明さんは?」


外に出ても手を繋いでいたことが急に恥ずかしくなって、うつむきながら訊き返した。


「僕は、何でも……と言いたいところだけど。がっつりと肉を食べたいかな」

「え……お肉ですか? 私はお魚だと……」


意外で思わず顔を上げると、貴明さんはニヤリと笑った。何だか悪戯が成功した子どもみたいで、 気が抜けてしまいましたよ。


「残念ながら、ぼくは魚より肉な気分なんだ。だけど、結実の好きなものも食べられる場所がひとつだけあるよ。ほら、あのフードコートで好きなものを頼もうか」