あなたのヒロインではないけれど




……なぜ、こんなことに。


また、本日二度目の同じことを考えたけれど。この状況を作ったのは自分しかいない訳で……。


「ほら、結実。もうすぐイルカショーだから、急がないと」


なぜか上機嫌な氷上さんは、イルカショーが行われるスタジアムを目指すのだけど。


彼の大きな手が……私の手をしっかり包んで……いわゆる手を繋いだ状態のまま。


それだけで消えそうになるくらい恥ずかしいのに、氷上さんは“名前呼び”をリクエストしてきたから始末が悪い。彼に初めて名前を呼ばれた瞬間、顔が熱すぎて頭が噴火するかと思えた。


そして、彼の名前を呼ぶ時に耳まで真っ赤になっただろう私を、氷上さんは笑って見てたけど。


その笑みは……いつもの偽ったものでなくて……心の底から楽しいというような。朗らかなものだったから。よかったと私も嬉しくなって、自然に笑顔になれた。


どうして、ゆみ先輩とは終わったような言い方をしたのか。


本当にゆみ先輩とはもう何もないのか。


どうしてアメリカから帰ってきたのか。


訊きたいことはたくさんあったけど。今はただ、氷上さんが楽しんで気晴らしになればいい。私はそう考えてた。