あなたのヒロインではないけれど




こ、恋人として!?


意味を理解した瞬間、私は首を横に振った。


「と、とんでもありません! あの……そんな。それこそ誤解されてしまいます。わ、私のような地味な女は……氷上さんに合いませんし。それに……」


それに……


一番知訊きたくて、一番訊きたくなかった言葉。それを今言わねばならないなんて……とハンドバッグの肩紐を握りしめながら、思い切って彼を見据え言葉をぶつけた。


「あ、あなたの大切な人を誤解させてしまいます。私は……そんなの悲しいですから……なので……それは……いけません」


勢い込んでいたのに、結局恋人とか彼女とかハッキリ言えなかった。なんて意気地無しなんだろう、私は。


でも、他人にこれだけ自己主張をしたなんて、いつ以来だろう。いつもいつも流されてばかり。他の人にちょっとでも強く言われただけで、すぐに押し黙って従ってしまう。


喧嘩をしたり衝突して揉めるよりも、自分がガマンをして上手くいくなら……と。いつの間にか自分を抑えるのが当たり前になってたのに。


今、こうして水族館に来たのも。流された結果。


もう、これからはそうならないためにしっかりしなきゃ。


ゆみ先輩を、悲しませちゃいけない。私は大切な人たちを不幸にさせたくはないんだ。だから、たとえ気まぐれや軽い気持ちでも……こんなのは駄目だ。恋人や婚約者等の特定の相手がいる人となんて。


それだけはどうしても譲れない一線。マンションの時とは違う……誰が見ているかわからない場所なんだから。


そう思ってたのだけど。