あなたのヒロインではないけれど




昨日氷上さんから頼まれたのは、アースィが次に冒険する世界をシリーズにして玩具を作る、というもの。マスコットや人形は言うに及ばず、様々な形での展開を考えるみたいです。


で。


氷上さんが考えた舞台というのが海でして。 その参考にするために水族館に行きたいのですが……と躊躇いながら、何故か彼は私を誘ってきた。


“このアイデアはまだ誰にも内緒にしてまして、鵜野さんにしかお話ししてません。ですから、共犯者としてお付き合い願えますでしょうか? 本物を見ればなにかいいアイデアが出るかもしれません”なんて言葉を巧みに私に囁き……その通りだと納得した私は、たぶん思考停止状態だった。


なにせ、氷上さんから一対一で水族館に誘われるなんて。一体なんの奇跡が起きたのか。


もちろん、嬉しいに決まってる。二人きりで過ごせるなんて夢のよう。


でも……。


(駄目だよ……浮かれて我を忘れないで。氷上さんにはゆみ先輩がいることを忘れないで。 どんなに彼が優しくても、勘違いしちゃいけない。あくまでも仕事のためなんだから)


冷静に、冷静に。浮き立った気分で我を忘れたり、羽目を外すと結局自分のためにならないんだから。