どうやら結城さんが住所を伝えておいたらしく、タクシーは迷うことなくマンションに到着した。
マンションとはいえ単身者向けなのか、少しこじんまりしたシンプルな外観。グレーを基調にしたオシャレなデザインで、オートロック等のセキュリティも万全のよう。
氷上さんがオートロックの解除をしたのを見届けると、あれなら大丈夫かなとタクシーに引き返そうとした。
けど……
タクシーに乗り込もうとしたところで、ガタンと大きな音が響き、どうしたのかと振り向けば。氷上さんがうずくまってる。
「氷上さん!」
反射的にタクシーから降りると、彼の元に駆け寄る。彼の顔は真っ青で、とても苦しそうだ。
「大丈夫ですか? お水……飲みます?」
ペットボトルのミネラルウォーターがバッグにあったから、急いで取り出したけど。彼は「いい」と手を振って額に手を当てた。
「じゃ、じゃあ……そこで休んでいてください。荷物を拾ってきますから」
四苦八苦しながらすぐ近くのベンチに彼を誘導すると、落としたビジネスバッグや荷物を拾うために戻る。
その中に、あのストラップがついたままのスマホがあった。
「……」
画面が下になったまま落ちてるスマホを持つのは躊躇うけど、あんな具合が悪い氷上さんに拾わせる訳にもいかなくて。思い切って手にした瞬間――耳慣れない声が聞こえた。
『もしもし、貴明。すごい音がしたけどどうしたの?』



