パフューム……しかも、女性向けのフレグランスだ。
フワリと薫ったのはバラのような大輪の花を、それもエレガントさと妖艶さを感じさせるものだった。
氷上さん自身は香水は苦手だとオーデコロンさえ付けてなかった。だから……考えられる可能性としては、香水を付けた女性と共にいた、ということ。
これだけ移り香がするなら、一時触れ合っただけではないはず。つまり……氷上さんはその女性とかなり近い距離……二人きりでいた。
(ゆみ先輩……? ううん、氷上さんがそれだけ接近を許すのはゆみ先輩以外にない。婚約者なんだから……当たり前なんだよね?)
何も花見を抜け出してまで密会しなくても、と思うけど。もしかすると今日会えるのはこの時間だけなのかもしれない。だから……こっそりと二人きりになって……。
移り香がこれほど移るまで……ゆみ先輩の近くにいたんだ。
それを思うとズキズキと胸が痛み涙が出そうになるけど、ひたすらジュースを飲んで必死に誤魔化した。
その後も氷上さんは手当たり次第にお酒を空けていき、遂には結城さんすら止めるほどで。一時間後には珍しく酔いつぶれた氷上さんが、結城さんに抱き抱えられてた。
「……ったく、仕方ねえな。ほら、歩けるか?」
「……すみません」
「仕方ねえよ、たまにはな。いつもだったら怒るが、おまえにしちゃ珍しい。何があったかは知らんが、今夜はもう寝て忘れちまえ。いいな?」
「……はい」
結城さんは氷上さんをタクシーに押し込み、なぜか私に手招きしてきた。
「鵜野、悪いが氷上のマンションに一緒に行ってやってくれ。このままだと危なそうだからな」



