あなたのヒロインではないけれど





“洋平おじいちゃん”の名字や詳しいことはよく知らない。

ただ、よくお土産におもちゃを持ってきてくれて。“おもちゃ屋をしてるんだ”と話してたから、きっとどこかでお店でも持ってるんだと思う。


前に会ったのは3年前。私が念願叶って“ミラージュ”に就職できた時。どこから聞いたか、花束を持ってきてプレゼントしてくださって。

“もう、おもちゃは卒業だなぁ”なんて寂しそうに笑ってらしたっけ。


こうして会うのは3年ぶりだけど、おばあちゃんとそう変わらない年のはずなのに、相変わらず若々しい。


洋平おじいちゃんの分もおはぎを出してお茶を淹れると、縁側にいる二人にそっと出す。


「ありがとう」

「い、いえ」


洋平おじいちゃんは私には白百合を、おばあちゃんには枝桜の花束を持ってきてくださった。縁側に置いた花瓶に生けると、おばあちゃんは嬉しそうに眺めてる。


おばあちゃんは体のあちこちが悪くて滅多に外出できなかったけど、これで小さなお花見が出来る。洋平おじいちゃんの細やかな気配りに、感謝しつつも学ぶことが多かった。


「時に、仕事は上手くいってるかい?」


湯飲みを持った洋平おじいちゃんに訊かれ、慌てて「はい」とうなずいた。


「皆さん、とてもよくしてくださいますから……」


話してから、ハッと口をつぐむ。いけない、いけない。いくら洋平おじいちゃんにも、まだ未発表のプロジェクトについて話す訳にはいかないものね。