何だか気分が浮き立って、妙に楽しい。さっきは落ち込んでたのになぁ……なんて考えながら、まぁいっかと深く考えるのをやめた。
今、うじうじしたってどうしようもない。氷上さんが手が届かない人というのは現実なんだから……。
熱くなった体を冷ますのに、ちょうどいい風が吹いてきた。繁華街だから人通りは多い。すぐ近くのコンクリートの段差に腰を下ろすと、そのまま夜景を眺める。ネオンやイルミネーションがあちこちで輝いて、まるで地上に星屑が降りてきたみたいだった。
「……綺麗」
「そうですね」
すぐそばで氷上さんの声が聞こえるなんて、夢のよう。
こうして二人きりになれるなんて……思ってもみなかった。
(これだけでいい……何も期待しない。氷上さんの声が聞けて……顔が見られる。それだけで十分)
それだけで、しあわせ。
10年前はそばに近づくことすらできなかったんだから、こうして近くに居られる。その幸運以上に欲張らない。そう自分に言い聞かせてた。
……なのに。
「鵜野さん」
氷上さんが私の手を取ると、手のひらにそっと何かを包ませてきた。
「よかったら受け取ってもらえますでしょうか?」
「……え」
「今日は、ホワイトデーですから……」
見上げた氷上さんの顔は、イルミネーションの影になっていてどんな表情をしているのかまったく見えない。小さなラッピング袋は、硬い感触を手のひらに伝えてきた。
恐る恐るそのリボンを解いて――出てきたものに一瞬言葉を失った。



