両親よりもずっといろんなことを打ち明けることが出来る高見さんは、私が大事なことほど遠まわしに言うことしか出来ないことをよく分かってくれている。だからこそ今の会話で私が婚約破棄を望んでいるなどと考えてしまったのだろう。

でも違う。

私が高見さんに言えずにいたのは、それと正反対の思い。けれど高見さんはすでに覚悟を決めた顔をしていた。

「察してやれなくて悪かった。……今までつらかったな。けど今日でもう終わりにしよう」

恋というものがたった一言がきっかけでこんなにも脆く崩れていくものだと知らなかった私は、何も言えずに茫然するばかり。そうしているうちに、高見さんは私とのこれからの関係を決定付けることを口にした。

「三美社長には俺から言っておくから。だから君は何も心配しなくていい」

こんなにあっさりこの関係を終わらせようとするなんて、やっぱり高見さんは私との婚約は迷惑でしかなかったの?そう思うと否定する言葉も見つからない。涙目になる私に、高見さんは見当違いなやさしさを見せる。

「好きでもない男と結婚せさられるかもしれないなんて、今までずっと不安にさせていたんだな。でももう大丈夫だから泣いたりしないでくれ。社長のことは本当に俺に任せてくれていいから。君に望まない結婚なんてさせたりしないよ。………半年も嘘に付き合ってくれてありがとう、ひより」


私を呼ぶ彼の声は、こんなときにまで甘かった。




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