舜の恋を遠まわしに応援した日から数日して、報告があった。
「ゆーちゃん!!!あたし、舜ちゃんの彼女になれた!!」
「っ!…そっかあ!よかったね、まりか」
まさか、まりかから最初に聞かされるなんてね。
どうせならまだ、舜から聞く方がよかった。
ーーーそしたら、少しは諦められたかもしれない。
そんな報告を受けて1週間経っても、あたしの気持ちは変わらない。
いや、もっと好きになってくばかり。
なぜかって?…舜は付き合ってもあたしと変わらずいるから。
「ゆめ、帰ろ?」
「っ、舜。今日は部活のミーティングがあるからまりかと帰って?」
まりかと付き合ってもあたしと帰ろうとする。
あたしの側に、舜はいる。
ーー嬉しいよ、すごく。でもね、同じくらい…いや、それ以上傷ついてる。
あたしは舜からの"帰ろう?"っていう言葉をそのまま受け取ってはいけないから。
まりかのことも、あたしは考えなくちゃいけないフォローしなくちゃいけない。
あたしが舜と帰ったらまりかはどう思うの?
嫌な気持ちになるよね?友達じゃなくなるかもしれないよね?
ーーー大好きな舜からの誘いを、あたしはいつもどんな気持ちで断ってると思ってるの。
断りたくないよ、あたしだって帰りたい。
素直に"帰ろう"ってあたしも言いたいんだよ。
でも言えないんだよ。…なんで誘ってくるの、舜。
舜のはもう、まりかの彼氏なんだよ。
なんて、怒りと悲しみであたしはもう傷ついてる心にまた新しい傷をつける。
舜に誘わられる度、あたしは自分で自分の心に傷をつけるんだ。
「…ゆめ、さ…」
「ん?」
「俺がまりかと付き合ってから、一緒に帰ってくれなくなったよな」
「……用事があるから、ね」
「たまに嘘ついてんの…知ってんだぞ」
「っ!?」
「わかってんだよ、俺だって。まりかの彼氏だからあんまゆめといちゃいけねぇのも」
「…しゅ、ん…?」
「でもさ…ゆめといない時間になんかあったら俺、生きてけねぇよ。登下校はゆめの側に居ねぇと…不安なんだよ」
「生きていけない、なんて大袈裟だよ舜。…あたし、大丈夫だよ?いつも、ちゃんといるじゃない」
「でも今日はわかんねぇじゃん。…いつ事故に遭うか、わからねぇだろ…」
「もう遭わないよ。ちゃんと気をつけてるよ、あたし。」
「わかってる。…でも、おれが無理。もうあんな想いしたくない」
舜はだから、あたしといるんだね。
心配だから、不安だから。
あたしが中学2年の時に遭った事故が、今も舜を怯えさせているんだね。
あたしは交通事故に遭った。
信号無視してきた車にはねられて、生死をさ迷っていたらしい。
でもあたしは今、こうして助かって生きてる。
その事故が原因で足を怪我して大好きなバスケはできなくなったけれど。
事故に遭った後から舜は必ずあたしと登下校する。
あの日、事故に遭ったあの日だけ…舜と帰らなかったから。
舜はきっと自分を少し責めているんだろう、今でも。
「舜…あれはね、舜が居なかったら遭ったわけじゃないよ?」
「ゆめはいつだってそう言うけど…俺が守ってやれたかもしんねぇじゃん…」
「あたし、あの時舜居なくてよかったって思ってるよ」
「え…?」
「あたしじゃなくて舜がもし目の前で事故に遭ったらあたし立ち直れないよ」
目の前で好きな人が事故に遭ったらあたしは立ち直れない。
守りきれなかったって、助かったって後悔する。
あたしは一生悔やんでしまう。
目の前で好きな人を失う恐怖は1度たりとも味わいたくない。

