2月の後半になり、1番忙しい時期を過ぎて少しずつ余裕が出てきた頃。


いつものように5時からみんなで雪かきを済ませ、犬の体調チェックをして、家で朝ご飯。
和やかな雰囲気に包まれていた時に、裕美さんが思い出したように手を叩いた。


「そうそう、3月から政くんがこっちに戻ってくることになったんだわ。江田さんと入れ替わりになります」


話を振られた江田さんが、トーストを口に運びながら照れたように顔を綻ばせる。


「繁忙期も間もなく過ぎるからね。政くんと交代だよ」


そういえば江田さんは冬の間だけ住み込みで働いていると言っていた。
彼の代わりに違う人が来るというのは理解出来たけど、みんなの反応を見ると、これは毎年のことのようだ。
新しい『政くん』とは一体どんな人なのか。


「4ヶ月ぶりね、政と会うの。相変わらずでしょうけど」


ちょっと含みのある言い方をした麗奈さんはフフフ、と楽しそうに笑うと隣に座る啓さんが面倒くさそうに肩をすくめた。
泰助さんも苦笑いしてどう反応しようか困っているようだったけれど、いつもの優しい口調で語りかける。


「まぁ、電話で話した感じだと政も元気いっぱいみたいだったから。楽しくやっていくべ」

「はーい」


竹下さんや新庄さんは笑顔だったけど、啓さんはムスッとしていた。彼はいつでもそんな感じの顔つきだから、大した違和感は感じない。


「政さん……か」


若い人が少ないこの職場。
てっきり『政くん』と呼ばれている彼も、40代か50代くらいの笑顔が素敵な中年の男性なんだろうと勝手に思い込んでいた。