翌日。

愛美は無表情でパソコンに向かっていた。

特に入力する作業があるわけでもないが、もう何度も確認した支社からの連絡のページを意味もなく開いてみたりする。

(暇だ…。)


健太郎は今日も当たり前のようにお弁当を届けに来た。

もういいと言ったのにと愛美が文句を言うと、健太郎は弁当くらい作らせろと笑っていた。


緒川支部長は今日も朝から佐藤さんに付きっきりだ。

支部にいる時も佐藤さんのそばにいて仕事を教え、時間になると佐藤さんと一緒に支部を出て行った。

佐藤さんは今日も変わらず綺麗で、そばを通り過ぎた時にはいい香りがした。


緒川支部長は、午前中は佐藤さんの地区のお客さん宅を訪問して、午後は会議室で営業部の新人研修をして、夕方からは緒川支部長のお客さん宅を訪問した後、直帰するそうだ。

直帰するという事はかなり遅くなるのだろう。

明日は一日中、支社で会議と研修があるので、支部には来ないと言っていた。

それを考えると、今日の夜に会いたいと言うのはやめた方が良さそうだ。


仕事の後だけではなく、仕事中でさえ、同じ職場にいてもまともに顔を合わさないし、ろくに会話もしない。

今日、緒川支部長が唯一愛美に声を掛けた事と言えば、“慰安旅行の詳細をコピーして、支部の職員に配布しといて”の一言だけ。

仕事中の緒川支部長が無愛想なのはいつもの事なのに、佐藤さんに対する態度と比べると、自分にはわざと特別冷たくしているんじゃないかと思ってしまう。


暇を持て余して、商品チラシに社判を押してみたりもした。

(暇だな…。暇すぎて余計な事ばっかり考えちゃう…。誰か契約取ってきて、私に仕事させてよ…。)