オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2

健太郎の車は愛美の道案内で夜の街を走る。

「なんか不思議な感じ。健太郎の車に乗せてもらうの、初めてじゃない?」

「そうだなぁ。高校の卒業前から春休みに掛けて免許だけは取ったけど、専門学校行ってた時は金なかったし、働き出したら死ぬほど忙しくて、金使う暇もなかったな。そのおかげで金が貯まったし、仕事に慣れてやっと少し時間にも余裕ができたし…3年くらい前に車買ったら車通勤できるようになってラクになった。」

健太郎は前を向いて運転しながら話す。

その横顔を見ると、やっぱり健太郎もあの頃より大人になったなと愛美は思う。

「ふーん…。ずっと会ってなかったから、そういう話も初めて聞く。」

「あぁ…確かに会ってなかったな。どうしてるかなとは思ってたけど…。」

信号待ちで、健太郎はジャンパーのポケットからタバコを取り出して口にくわえた。

火をつけかけて、助手席の愛美を見る。

「あ…タバコいやか?」

「うん?まぁ…別にいいけど。」

「…やっぱいいや。愛美送ってからにする。」

健太郎はタバコを箱の中に戻し、ライターと一緒にポケットにしまう。

「やっぱり変な感じ。」

「ん?」

「感覚的には高校生くらいで止まってるのに、会ってないうちにやっぱり大人になったんだなぁって。」

「そりゃそうだろ。俺らもう27だぞ?いつまでもガキの頃と同じなわけがない。」

「高校生くらいの頃は、27歳ってもっと大人だと思ってたけど、そうでもないね。」

「確かにな。」