オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2

10時半を過ぎた頃。

「ドレスもテーブルコーディネートもとりあえず決まったし…今日はもう遅いからそろそろ帰ろうか。」

「そうだね。明日も仕事だし。」

「俺と由香は電車で帰るけど…愛美は?」

「ん?私も電車で帰るよ。」

席を立った時、愛美の右足に激痛が走った。

(しまった…薬飲めなかったから…。)

元々今日は外で食事をする予定ではなかったので、夕食後の薬までは持っていなかった。

周りに余計な心配を掛けまいと、痛みを堪えていつも通りに歩いていたのも良くなかったのだろう。

今朝よりも痛みがひどく、更に腫れている気がする。

「どうしたの、愛美?行くよ?」

「あ、うん…。」

(どうしよう…歩くとすごく痛いけど…。)

愛美が痛みを堪えゆっくり足を踏み出した時、健太郎が後ろから抱きしめるようにして愛美の体を支えた。

「今落ち着いてるし、人手もじゅうぶん足りてるから、愛美は俺が送ってく。」

「そう?じゃあ愛美、そうしてもらいなよ。健太郎、くれぐれも言っとくけど、愛美に変な事するんじゃないよ!」

「なんだよ、変な事って。」

「じゃあ健太郎、ご馳走さま!愛美、二次会の事とか、また連絡するね。」

「あ…うん。」

由香と武が一足先に店を出ると、健太郎は愛美の耳元でため息をついた。

「無理すんなよ。足、痛いんだろ?」

「……うん。」

「送ってく。店の前に車まわすから、ちょっと待ってろ。」

健太郎は厨房のスタッフに、少し出てくると声をかけ、足に負担が掛からないように愛美を支えながら店の外に出た。