オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2

“政弘さん”と付き合う以前は会社帰りに週に2度ほど、一人で行きつけのバーに行ってお酒を飲むのが楽しみだった。

緒川支部長に“好きだから付き合ってくれ”と言われたその日に、絶対にイヤだと思ってバーのマスターに“背の高い性格の穏やかないい男を紹介して”と頼んだら、現れたのがマスターの大学時代の後輩の“政弘さん”だった。

(マスターにしばらく会ってない。近いうちに行ってみようかな…。)


最近は自宅に帰ると、いそいそと二人分の食事を用意して、来るかどうかもわからない“政弘さん”を待っている。

“政弘さん”は仕事が早めに終われば会いに来て一緒に夕飯を食べるが、“政弘さん”の仕事が終わるのが遅くなった日は、作りすぎたおかずを前に、一人で遅めの夕飯を取る。

(だから最近少し太ったのか…?)


過去の苦い恋愛のトラウマで、確かな時間も約束されずに待たされる事が苦手だった。

待っているうちに“来ないかも知れない”と不安になり、信じた人にまた裏切られるのではないかと怖くなった。

だけど“政弘さん”と付き合いだしてから、待ってばかりいるような気がする。

待たされているのではなく、待っている。

会いたいと思いながら、なんの約束もしていない“政弘さん”が来るのを待つ。

もしかしたら会えるかもと思うと嬉しくて、待っているのもつらくない。

彼が来なかった日は、待っていた分だけ寂しくは思うけれど、約束をしていたわけではないから、彼を責めたりはしない。

忙しい人なのだから仕方ない、無理をさせてはいけないとあきらめる。

どんなに遅くなっても“これから行く”と言って、毎日会いに来てくれたらいいのに。

翌日が仕事でも、朝までそばにいてくれたらいいのに。

(なんて思ってても…かわいく言えないところがダメなのかなぁ、私は。)