緒川支部長が支部を出て1時間ほど経った頃、健太郎がまた支部に顔を出した。

「愛美、足大丈夫か?」

「…大丈夫じゃない。ってか、また来たの?」

「ランチも済んだし暇な時間なんだ。店長とバイトに店任せてきた。」

「暇だからって遊びに来ないでよ。こっちは仕事中なんだから。」

愛美は健太郎の自由さに呆れてため息をつきながら、契約書類のデータ処理を進める。

「弁当、うまかっただろ?」

「おいしかったけど…ちょっと量が多いよ。毎日あんなにたくさん食べてたら太っちゃう。」

文句を言いながらも完食したんだなと、健太郎は嬉しそうに笑う。

「ならちょうどいいじゃん。もっと肉つけた方が色気あっていいぞ。」

「だからそういうのセクハラだって…。仕事の邪魔だからもう戻って。ついでにお弁当箱持ってってくれる?……よし、完了っと。」

エンターキーを押してデータ入力を終えた愛美は、健太郎にお弁当箱を渡した。

「緒川さんは?」

「新人さんに同行してる。そうだ、健太郎のせいで支部長に拉致されかけたんだからね。」

「拉致?」

「病院連れてくって言って、みんなの見てる前で米みたいに肩に担ぎ上げられて…。すごい恥ずかしかった。」

健太郎はニヤッと笑って、何を思ったか愛美に弁当箱を持たせた。

「愛美、保険証持ってる?」

「持ってるけど…何?」

「その鞄の中?」

「うん。」