スマホを取り出して愛美の電話番号を画面に写し出し、思いきって電話を掛けた。
呼び出し音をひとつ聞くたびに、醜い感情で熱くなっていた頭が冷えていく。
「もしもし…?」
呼び出し音が途切れ愛美の声を耳にした途端、緒川支部長は取り繕うようにしていつもの“政弘さん”を演じた。
「愛美…、今帰ってきたよ。」
「お疲れ様です。飲みすぎてませんか?」
「少し、飲みすぎたかも…。」
「大丈夫ですか?」
少し心配そうな声で愛美が尋ねた。
緒川支部長は、弱い自分を愛美にさらけ出したい衝動を必死で抑える。
(全然大丈夫なんかじゃないんだ。ホントは今すぐ愛美に会いたい…。)
喉元まで出かけた言葉を飲み込んで、いつものように振る舞った。
「うん…大丈夫。明日も出勤しないといけないから、早めに寝るよ。明日仕事が早く終わったら行っていい?」
「明日、待ってます。今日はゆっくり休んで下さいね。」
「うん…今日は会えなくてごめんね。」
営業部長に誘われたと嘘をついた後ろめたさなのか、会いに行けなかった事への申し訳なさからなのか、気がつけば自然と謝っていた。
「仕方ないですよ。上司とのお付き合いも大事ですもんね。」
「うん…。じゃあ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
電話を切った後、意味もなくしばらくの間スマホを眺めていた。
(寂しかったとか、会いたかったのにとか、言ってくれないんだな…。)
おもむろに立ち上がり、握りしめていたスマホをソファーに投げつけた。
苛立たしげにネクタイを外して、グシャグシャに髪をかき乱す。
(仕方ないってなんだよ…。いつも会いたいって思ってるの、俺だけ…?)
呼び出し音をひとつ聞くたびに、醜い感情で熱くなっていた頭が冷えていく。
「もしもし…?」
呼び出し音が途切れ愛美の声を耳にした途端、緒川支部長は取り繕うようにしていつもの“政弘さん”を演じた。
「愛美…、今帰ってきたよ。」
「お疲れ様です。飲みすぎてませんか?」
「少し、飲みすぎたかも…。」
「大丈夫ですか?」
少し心配そうな声で愛美が尋ねた。
緒川支部長は、弱い自分を愛美にさらけ出したい衝動を必死で抑える。
(全然大丈夫なんかじゃないんだ。ホントは今すぐ愛美に会いたい…。)
喉元まで出かけた言葉を飲み込んで、いつものように振る舞った。
「うん…大丈夫。明日も出勤しないといけないから、早めに寝るよ。明日仕事が早く終わったら行っていい?」
「明日、待ってます。今日はゆっくり休んで下さいね。」
「うん…今日は会えなくてごめんね。」
営業部長に誘われたと嘘をついた後ろめたさなのか、会いに行けなかった事への申し訳なさからなのか、気がつけば自然と謝っていた。
「仕方ないですよ。上司とのお付き合いも大事ですもんね。」
「うん…。じゃあ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
電話を切った後、意味もなくしばらくの間スマホを眺めていた。
(寂しかったとか、会いたかったのにとか、言ってくれないんだな…。)
おもむろに立ち上がり、握りしめていたスマホをソファーに投げつけた。
苛立たしげにネクタイを外して、グシャグシャに髪をかき乱す。
(仕方ないってなんだよ…。いつも会いたいって思ってるの、俺だけ…?)



