オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2

愛美を想う気持ちなら誰にも負けないはずなのに、愛美は誰にも渡さないと言えなかった。

愛美は昔からそばにいた健太郎にはすべてをさらけ出せても、自分に対してはわがままのひとつも言ってくれない事が、もう既に負けているのかも知れないと思わせた。

(もしも付き合ってるのがあいつなら…文句もわがままも言えるのか…?素直に甘えたりもできるのか…?)

だけど自分自身もまた、愛美に嫌われるのが怖くて、隠している部分がたくさんある。

本当は毎日でも会いたいし、朝も夜もずっと一緒にいたい。

愛美に近付く男がいれば狂いそうなほど嫉妬もするし、誰にも触れさせないように閉じ込めてしまいたいと思うほどの独占欲もある。

だけどつまらない嫉妬心を剥き出しにして束縛なんかしたら、愛美は愛想をつかして離れていくかも知れない。

今は、愛美に嫌われる事が何よりも怖い。

長い片想いの末やっと手に入れた愛美を、何があっても失いたくない。

こんな情けない自分を知っても、愛美は他の誰よりも愛してくれるだろうか?



激しい嫉妬と自分への嫌悪感に苛まれながら自宅に帰りついた緒川支部長は、倒れ込むようにしてソファーに身を投げ出した。

(愛美に会いたい…。あいつのとこになんか行くんじゃなかった…。)

今からでも酔った勢いに任せて、タクシーを拾って愛美の家に行こうか。

どうしても会いたかったと言えば、愛美は笑って抱きしめてくれるだろうか?

(愛美…こんなカッコ悪い俺でも、好きだって…愛してるって…言ってくれる?)