オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2

健太郎から試作品を受け取り、出掛ける必要がなくなった緒川支部長は、それを持って休憩スペースに向かった。

「じゃあ、私は郵便局に行ってきます。」

愛美が支部を出ようとすると、健太郎がその後に続く。

「愛美、俺も店に戻るからそこまで一緒に行こう。それじゃあ失礼します。」

愛美と健太郎が二人で支部を出ると、緒川支部長は小さくため息をついた。

ビニール袋から試作品の入った弁当箱を取り出し、蓋を開けてじっと眺める。

肉野菜炒めに白身魚のフライ、ポテトサラダ。

自分には作れない料理ばかりだ。

割り箸を割って肉野菜炒めを一口食べてみる。

(うまっ…。料理人だから当たり前かも知れないけど、あいつこんなの作れるんだ…。)

宮本さんと竹山さんが言っていたように、料理はまったくできない。

洗濯は休みの日に仕方なくするけれど、ワイシャツはクリーニングに出す。

時間があまりないので、掃除はお掃除ロボットに任せきりで、行き届かない面倒な場所は何ヵ月かに一度、ハウスクリーニング業者に頼む。

家事もろくにできない自分は、共働き夫婦の夫には向いていないかも知れない。

(愛美は仕事の後に俺が急に訪ねて行っても、文句のひとつも言わずに夕飯を用意してくれるけど…。ホントは愛美も料理ができる男の方がいいのかな…。)

緒川支部長はポテトサラダを口に入れてため息をついた。

(これもうまい…。よく考えたら、俺はいい年して米も炊いたことないぞ…。)