オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2

お昼前になると、数人の職員たちが支部に戻ってきた。

「菅谷さん、これお願いします。」

金井さんが内勤席のそばに来て、契約書類の入った封筒を差し出した。

愛美は封筒を受け取り、書類に不備がないかチェックをする。

「お疲れ様です。新規契約ですね!おめでとうございます。職域からですか?」

「保険年齢が上がる前にって、ずっと言ってたんだけど、若い子は保険ってピンと来ないからなかなかねぇ。で、明日になると保険年齢が上がって保険料も上がりますよ!って言ったら、割とすんなり書いてくれたの。」

「保険年齢上がる前に手続きできて良かったですね。すぐに入力します。」


誕生日から6ヶ月が経過すると、保険契約上の年齢はひとつ上がる。

契約時の年齢が上がるにつれ、平均余命までの年数と払い込み満了日までの保険料支払い回数が減り、死亡率が上がる。

それに比例して保険会社からの保険金支払い率が上がる事から、毎月の保険料は上がる仕組みになっている。

世話焼きの金井さんの事だ。

きっと職域の若い男性社員を相手に、“若いうちは元気だから保険なんて必要ないと思ってても、歳取って病気になってからじゃ入れないのよ!元気で毎月の保険料が安く済む今のうちに入っときなさい!!”などと、母親のように諭したのだろう。


金井さんは肩をコキコキ鳴らしながら、休憩スペースの椅子に座った。

「お昼食べたらもう一件行って来なくちゃ。」

「金井さんも注文してましたよね。今日は試作だから三種類の中から好きなのを選んで食べてってオーナーが言ってました。」

「塩サバが食べたいわぁ。少し早いけどいただこうかしら。」

「早い者勝ちですね。」