オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2

10時半過ぎ。

お弁当を届けに来た健太郎は、支部の職員がほとんど出払っている事に驚いた。

「あれ…?なんでこんな静かなんだ?」

「支部長に追い込まれてるんだよ。」

「なんで?」

愛美はデータ入力する手を止めて、チラリと支部長席を見た。

緒川支部長は今日も佐藤さんに同行している。

「頑張らないと、慰安旅行に行かせてもらえないの。そんなわけだから、木曜と金曜はお弁当の注文はないよ。」

「そうか。じゃあ、来週から本格的に始める。今日と明日はお試しだな。」

今日は何種類かの試作品を、注文した人数分だけ持ってきている。

健太郎は休憩スペースのテーブルの上に、お弁当を種類別に置いた。

「健太郎は昔からフットワークが軽いよね。思い立ったらすぐ行動する。」

「まぁな。でも俺だって、思ってもなかなか行動に移せない事もあるぞ。」

「ふーん?そうなんだ。」

健太郎がなかなか行動に移せなかったのは、ずっと好きだった愛美に好きだと言えなかった昔の事だと、愛美は気付かなかった。

テーブルの上に並べられたお弁当を見て、愛美は怪訝な顔をした。

お弁当の蓋の上に、豚肉しょうが焼き、コロッケ、塩サバと、お弁当の中身がわかるように紙が貼ってある中に、なぜかひとつだけ、緒川様と名指しで書かれている。

「何これ?支部長だけ特別?」

「そう、特別。だから他の人が食べないように名前書いといた。愛美、今日は注文しなかったな。俺の弁当、飽きたか?」

「そういうんじゃないよ。簡単だけど今日は自分で作ってきた。私以外にも健太郎のお弁当を注文してくれる人がいるし、これからはできるだけ作ろうかなって。」

「へーぇ、愛美もそんな事するんだな。でもたまには注文しろよ。」

「たまにはね。」