蜘蛛の子を散らすようにそそくさと退散するオバサマたちに向かって、緒川支部長は声をあげる。
「夕礼までには戻って来いよ!」
その様子を見て、健太郎は我慢ができず吹き出した。
「仕事中は鬼なんですね。すみません、皆さんのお仕事の邪魔しちゃって。俺も緒川さんに怒鳴られないうちに退散します。」
健太郎は支部を出る直前で振り返り、緒川支部長に笑いかけた。
「明日、弁当の試作を作ります。特別料金で半額にしますから、良かったら緒川さんもいかがです?」
「ん…?ああ、それじゃお願いしようかな。」
「楽しみにしてて下さい。」
やけに楽しそうに笑って去っていく健太郎に、緒川支部長は一抹の不安を覚えた。
休憩スペースには誰もいなくなった。
さっきまでおしゃべりにいそしんでいたオバサマたちは、すっかり保険のセールスレディの顔をして、行ってきますと支部を出ていく。
愛美はいつの間にか、内勤席でコーヒーを飲みながらパソコンに向かっている。
愛美の後ろ姿を見ながら、夕べまであんなに甘えていたのにと、緒川支部長は苦笑いをする。
二人きりの時、愛美は猫のように甘えたりすましたりして“政弘さん”を翻弄する。
職場では、頼れる内勤事務員として、テキパキと手際よく仕事をこなす。
今の二人は、仕事とプライベートをキチンと分けているからこそ、ちょうどいい距離感が保てているのかも知れない。
緒川支部長はポケットから小銭を取り出し、自販機で缶コーヒーを買って支部長席に戻った。
「夕礼までには戻って来いよ!」
その様子を見て、健太郎は我慢ができず吹き出した。
「仕事中は鬼なんですね。すみません、皆さんのお仕事の邪魔しちゃって。俺も緒川さんに怒鳴られないうちに退散します。」
健太郎は支部を出る直前で振り返り、緒川支部長に笑いかけた。
「明日、弁当の試作を作ります。特別料金で半額にしますから、良かったら緒川さんもいかがです?」
「ん…?ああ、それじゃお願いしようかな。」
「楽しみにしてて下さい。」
やけに楽しそうに笑って去っていく健太郎に、緒川支部長は一抹の不安を覚えた。
休憩スペースには誰もいなくなった。
さっきまでおしゃべりにいそしんでいたオバサマたちは、すっかり保険のセールスレディの顔をして、行ってきますと支部を出ていく。
愛美はいつの間にか、内勤席でコーヒーを飲みながらパソコンに向かっている。
愛美の後ろ姿を見ながら、夕べまであんなに甘えていたのにと、緒川支部長は苦笑いをする。
二人きりの時、愛美は猫のように甘えたりすましたりして“政弘さん”を翻弄する。
職場では、頼れる内勤事務員として、テキパキと手際よく仕事をこなす。
今の二人は、仕事とプライベートをキチンと分けているからこそ、ちょうどいい距離感が保てているのかも知れない。
緒川支部長はポケットから小銭を取り出し、自販機で缶コーヒーを買って支部長席に戻った。



