愛美が“政弘さん”の腕の中で顔を上げた。

「…ベッドの中で、たくさんしてくれるんじゃなかったんですか?」

「ん?」

「キスの続き。」

愛美からこんな事を言うのは珍しい。

“政弘さん”は、ちょっと意地悪をしてみようかと、わざとらしく焦らしてみる。

「愛美が疲れてなければ。」

「……じゃあ、寝ます。」

愛美にあっさりとそう言われ、そんなはずじゃなかったのにと“政弘さん”はうろたえる。

「えっ、キスの続きは?」

「政弘さんが疲れてなければ。」

同じ言葉をそっくりそのまま返されて、“政弘さん”は心の中で白旗をあげた。

(やっぱり愛美には敵わない…。)

「……全然疲れてません。キスの続き、したいです。」

愛美は少し笑って、“政弘さん”の唇に軽くキスをした。

「いっぱい、するんですよね。」

「……もちろん。」


見つめ合って、微笑んで、優しく唇を重ねた。

愛美のいつになく甘いキスに、“政弘さん”は身体中が熱くなるのを感じる。

「愛美、今日は甘い、ね。」

「甘いの、嫌いですか?」

いつもはちょっと辛口な愛美が、少し甘えた声で尋ねた。

愛美も甘えたい時はちゃんと甘えてくれるんだと、“政弘さん”は嬉しくなる。

「ううん、めちゃくちゃ好き。愛美は?」

「政弘さんに限り、大好きです。」

「じゃあ、もっと甘くしよ。」

抱きしめて、優しく唇を重ねて、柔らかく舌を絡めた。

何度も何度も、飽きることなくキスをした。

頬を撫でる指先や、髪を撫でる大きな手。

時おり小さくもらす吐息混じりの甘い声。

お互いの肌の温もりや体の重みさえ愛しい。

「キスの続き…もっとする?」

愛美は耳元で囁く甘い声にうなずいて、その華奢な腕で“政弘さん”を抱きしめた。

「もちろん。」