愛美からのメールを確認した“政弘さん”は、返信をしてからコーヒーをもう一杯注文した。

愛美がなかなか戻って来ないので、具合でも悪いのかとか、誰かに連れていかれたんじゃないかと心配していたけれど、そうではないとわかってホッとした。

買い物なら一緒に行けばいいのに一人で行ったという事は、自分には知られたくない買い物だったのかも知れない。

運ばれてきた熱いコーヒーを一口飲んで“政弘さん”は、ああそうか、と小さく呟いた。

(もしかして…愛美が選んでくれた服を俺が自分で全部買ったから?)

愛美には金銭的な負担を掛けたくなかったし、プレゼントをもらうより何かをしてもらった方が嬉しいと言ったのは本心だが、愛美は不服そうにしていた。

愛美なりに気を遣っていたのかも知れない。

(俺も気を遣いすぎ?愛美もたまには甘えて欲しいって思ったりするのかな。)

愛美が一人で何を買ったのかはわからないが、もし本当にこっそりプレゼントを買いに行ってくれたのだとしたら、自分のために愛美が何かをしたいと思ってくれたのだから、それはやっぱり素直に嬉しい。

(愛美が俺のためにしてくれる事なら、なんでも嬉しいな。もし愛美が買ったのが俺へのプレゼントだったら、素直にありがとうって言って受け取ろう。)

“政弘さん”がカップをソーサーの上に置いた時、`アナスタシア´のショップ袋を持った愛美が戻ってきた。

「政弘さん、お待たせしました。」

「おかえり。いいの買えた?」

「ハイ!」

愛美の満面の笑みを見て、“政弘さん”は嬉しそうに笑った。