その後も“政弘さん”は、愛美に選んでもらった服を何着か自分で買った。

“政弘さん”へのプレゼントを選ぶために買い物に行きたいと言ったのに、“政弘さん”は愛美に財布を開けさせようとしない。

(欲がないのは政弘さんの方じゃないの?)

愛美は少し離れた場所から、自分でお金を払う“政弘さん”を不服そうに見ている。

(自分だって私に内緒でプレゼント買ってきたくせに、私には何もプレゼントさせてくれないんだもんな…。)

愛美はすぐそばに並んでいたルームウェアを何気なく眺めた。

今後のために“政弘さん”の部屋着を自分の部屋にも置いといた方がいいかなと、ぼんやりと考える。

(あっ、そうか。私も内緒で用意すればいいんだ。政弘さんのサイズもだいたいわかったし、後でこっそり買いに行こう。)



レジから戻って来た“政弘さん”が、小腹も減ってきたしどこかでお茶でもしようと言った。

どの店に入ろうか相談していると、人気のファーストフード店が何軒も並んでいるフードコートにしようかと“政弘さん”は言ったけれど、見通しが良すぎるフードコートだと化粧室に行くふりをして買い物に行くのは難しい。

ちょうどすぐそばに貼ってあったカフェレストランのポスターが目に留まり、“クラブハウスサンドが美味しいらしいからこの店にしましょう”と愛美が言った。

“政弘さん”はなんの疑いもなく、愛美がそう言うならと、その店に足を運んだ。

ホットコーヒーとクラブハウスサンドで一息ついた後、愛美は化粧室に行くと言って席を立った。