お風呂から上がった愛美は、洗面所の鏡の前で髪を乾かしていた。

「あっ…!」

不意に、通販で買った化粧品の代金を今日中にコンビニで支払わなければいけなかった事を思い出した。

歓迎会の後、駅から自宅までぼんやりしながら歩いていて、すっかり忘れていた。

(どうしようかな…明日にするか…。でも気付いちゃうと気になって眠れなくなりそう…。)

愛美は壁時計を見上げた。

まだ10時を過ぎたところだ。

自宅から近所のコンビニまで歩いて3分程度。

金曜のこの時間ならば、まだ人通りもある。

お風呂に入ったので化粧は落としてしまったけれど、すぐそこのコンビニまでなら問題ないだろう。

(急いで行って来よう。)

愛美はマフラーを巻き、丈の長い上着を着て、バッグを持って自宅を出た。


エレベーターのボタンを押そうとすると、タッチの差で下に降りてしまった後だった。

エレベーターが一度1階まで行って戻ってくるには時間が掛かる。

(上がってくるの待ってるより、階段で降りた方が早そう…。)

愛美はエレベーターをあきらめ、階段で1階まで降りる事にした。


愛美が階段で1階にたどり着く頃、エレベーターは一人の男を乗せて愛美の部屋のある階に戻ってきた。

背の高いその男はエレベーターを降りると、急ぎ足でマンションの廊下を歩いた。

そして愛美の部屋の前に立ち止まり、沈痛な面持ちでインターホンのボタンを押した。