「俺、電柱にぶつかって倒れてたの……?」

「うん!そうだよ!本当にびっくりしたんだからぁ……」


あれ。その後に誰かと会ってた記憶があるんだけど……気のせいか?


「ごめん。心配かけた」

「ううん。本当に、あっくんが無事で良かった。……あ、それより。このマフラーって、あっくんの?」

「え?」


春が、膝の上に置いてあった白いモコモコのマフラーを持ち上げた。

何か、見覚えがあるような、ないような……


「大事そうに握ってたからあっくん運ばれる時に一緒に持って来たの。でも、あっくんこんなの持ってたかなぁって思って……」


春から、白いマフラーを受け取った。

どこか懐かしい匂いがするマフラー。俺のものではないはずだけど、どうしてか手から離すことができず、握りしめたままでいた。

すると、それとほぼ同時に春が続けて言葉を発した。


「私ね……あっくんと別れようと思ったの。だけど、やっぱり無理だった。だから、今日、あっくんの家に行こうとした」

「春……」