「え……あっくん……?」


目をくるりと丸くして、目に涙を浮かべた彼女。泣いているけれど、何故か幸せそうな表情だ。


「なに?」

「あっくんが、初めて私の名前呼んでくれた……ような気がする……」

「……何それ。いつも呼んでたでしょ」


なんだか照れくさくて、春を腕から解放するとそっぽを向いた。

すると、春は嬉しそうに布団の上で手をバタバタとバウンドさせた。


「こら、やめろってば」

「だって!嬉しいんだもん!嬉しくてどうにかなっちゃいそう」

「何大げさな事言って……」

「って‼︎それより、あっくん、頭とか肩とか大丈夫⁉︎」

「え?」


春が、ぺたぺたと俺の頭や肩を触る。

湿布などで処置してある上からとはいえ、触られると若干痛んだ。


「やめて。痛いから」

「ああっ!やっぱり痛い? ごめんなさい、つい……あっくん、電信柱にぶつかっちゃったみたいで、道端に倒れてたんだよ? 私、あっくんの家に行こうとしたらあっくん倒れてるからびっくりしちゃって……」