「うーん……よし、決めた。じゃあ注文しようか」

「あ、敦くん、私お手洗い行ってくるから注文しておいて!」

「あ、うん。分かった」


注文のベルを押そうとすると、ハルが慌てた様子で席から立ち上がり去っていった。

俺の押したベルの音が店内に響き渡ると、さっきと同じスタッフが足早にやって来る。店内は空いていて暇そうなだけに、スタッフの動きも俊敏だ。


「ご注文お決まりでしょうか? 先にドリンクからお伺いします」

「あ、はい。カルーアミルクとグレープサワーで」


メニューを広げ、ドリンクが載っているページの上で人差し指を滑らせる。そうしながら順に注文を並べると、男性スタッフの目がくるりと丸くなった。

瞳を大きく見開いて、不思議そうな顔をしている。


「ええっと、他にご注文はございますでしょうか?」

「あ、えっと……枝豆と出し巻き卵と……」


メニューをめくり、引き続き注文するものを並べた。その頃にはスタッフの表情も戻っていて、あの何か言いたげで不思議そうな表情は勘違いだったのかと思った。