だけど、俺はハルに『好き』と伝えたことは一度もない。

たったの、一度も。


「ねぇねぇ、敦くん」

「なに」


隣を歩き始めたハルが、いつものように笑顔のままで呼んだ。だから、俺もいつものように返事をする。


「ふふふ。何でもなーい」

「なにそれ。本当は何かあるんでしょ。気持ち悪いから早く言ってよ」

「ええー? 言っちゃっていいのー?」

「ああ、もう。そういう絡みいいから。早く言って」

「ちぇーっ。こんな冷たい敦くんに、こんなことは言いたくないですが発表します」


どぅるるるん、とクイズなどで正解発表前にかかるお決まりの音がハルの口から出てくる。

その音が止まると、ハルの頬が心なしか少しだけ赤くなった。


「なんか……ふと幸せだなぁ、って思ったのでしたー!」


えへ、と舌を出しておどけてみせたハル。そんなハルの手前、あまり反応したくないけれど、若干顔が熱くなった。


「……なに言ってんの」


照れ隠しに、素っ気ない言葉を吐き捨てる。そして、少しだけそっぽを向いた。