ふわりと綺麗に微笑んだ彼女の表情に、一瞬目を奪われた。

本当に昔のままだ。綺麗にカーブを描いて上がっていく口角と、薄く開く瞼。懐かしすぎるその笑顔に、俺の胸はドキリとした。


「なに? そんなに見て」

「……あ、いや、なんでもない。っていうか、彼女いるなんて一言も言ってないんだけど」

「あはは、分かるよ。表情を見れば。敦くん、その彼女大事にしてあげられてる?」

「それは……どうかな。できてないかも」


俺の胸がドキリとしたのは、恋のトキメキのような意味合いもあるけれど、それ以上に恐怖の方が大きかった。

俺には彼女がいる。自然消滅寸前ではあるが、ハルという名の彼女がいるんだ。それなのに、この目の前のハルに心奪われてしまいそうな自分が怖かったのだ。

一度は付き合って、ちゃんと伝え合っていたわけではないが、好き合っていた人。

ちゃんと想いを伝えられないまま、思い残りを残したままで離れてしまった、好きな人。


そして……


「俺は、彼女にハルを重ねてたから。もう、愛想つかされたのかも」


彼女であるハルに、重ねて見ていた人。