親指にリング、薬指に絆創膏



ふう、と溜息を吐けば、仙崎は楽しそうに笑った。
何が楽しいのかはまったく分からないけど。おそらく、私の不幸を面白がっているのでしょう。私にはロクな友達もいないのか。

「……ねー仙崎」
「あ?」
「……私ってバカだと思う?」
「思う」

即答。いや分かってたけどね。いざ言われると落ち込むな。うううと唸れば、意地悪く笑った仙崎は帰るぞと私の鞄を持ち上げた。わー憎たらしい。

仙崎から鞄を受け取って、一緒に教室を出る。なんだかんだ彼氏が途切れない親友のおかげで、こうして仙崎と二人で帰るのが日課になりつつあるい。方向も同じで、お互い帰宅部だから。

いつも通りのバカみたいな中身のない言い争いをしながら玄関まで行ったところで、今度は私のスマホが震えて新着ラインを通知した。

「……あれっ、翔太くんだ」

思わず出た声は明るい。自分でも単純って思う。ほぼ反射。自分でもびっくりだ、私って嬉しいときこんな声でしゃべるんだ。

でも珍しいな。向こうから連絡してくることなんて滅多にないのに。
えーっ、どうしたんだろう。単純に嬉しい。ちょろいのは自覚済みです。

ドキドキしながら立ち止まって開けば、【バイト無くなったから会えるけど】という一言だけのメッセージ。

「――うわあ、こいつ何さま?」
「はあ? ちょ、おい、勝手に見ないでよ!?」

私の後ろからスマホを覗き込んだらしい仙崎は、非難めいた口調で、ドン引きを隠さない顔をする。頬が緩みに緩み切っている私とは対照的すぎる。

「ハハハ、見ての通り私達ってラブラブなわけよ。翔太くんったら今すぐ私に会いたいみたーい」
「会いたいなんて言われてねえだろすげえ都合いい解釈だな!? 会える”けど”特に会いたいとは思ってませんよーって意味だろうが!」
「な、悲しい解釈をするんじゃないよ!」
「現実を見ようね成美ちゃん」
「失礼な! ま、悪いけどあんたとは一緒に帰れないわ、ごめんね! ホホホ、悔しかったら仙崎も私みたいな可愛い彼女作りなさいね!」
「アホか。間違ってもお前みたいなブス好きにならねえというか、なれねー……」
「本当に失礼だなコノ野郎」

会えるけど。けど。その「けど」の意味を深く考えたらだめだよ。
でも翔太くんの方から会いたいなんて言ってくれるのほぼ始めてみたいなもんだし! ……会いたいとは言われてないけど。言ってるようなものでは?
我ながらわざとらしく高笑いして誤魔化した。

その間にも翔太くんとラインして、私が彼の大学まで行くことに決まる。そう遠い距離じゃない。

「……成美」

翔太くんからの返信を待っている最中も、仙崎はなぜか帰ろうとせず私のそばにいた。

仙崎が名前を呼ぶから顔を上げれば、思いのほか真剣な顔をしていて少し緊張した。

「……ワガママな彼氏より優しい男友達って言うだろ。俺にしとけば?」
「……奢らないよ?」
「……チッ、やっぱりか。言って損したわ」

おどけて笑う仙崎につられて笑って、そこで別れた。