華麗なる人生に暗雲があったりなかったり





 食卓はすっかり準備をされていた。


 さすがに六人ともなると手狭だ。



「水野の分は?」



 箸が五人分しか用意されていない。


 おじさんは、がばっと顔を上げ俺を見た。


 仁も俺を見ている。



「小春も食べるのか?」



「ええ。もうすぐ下りてきますよ」



 おじさんは笑みをこぼしたが、次の瞬間、俺を睨んだ。



「何で、君なんだ?私が呼んでも何も言ってくれなかったのに!!」



 おじさんの小言は無視する。


 仁も面白くなさそうな顔をしていた。


 ざまぁ見やがれ。


 実際は、仁に会いたくて下りてくるだけで俺の手腕ではないけど。


 少しぐらい俺にだって功績があるはずだ。











 水野が障子を開けた瞬間、緊張が走る。


 恐怖の晩餐会のはじまりだ。


 俺の隣に座るおばさんをちらりと見る。


 おばさんと目が合い、にっこり微笑まれる。


 こうやって男を陥落させてきたんだな、というような極上の笑みだった。


 だけど、俺には恐怖の笑みだった。


 この人は鬼だ。


 棍棒ならぬ爆弾を持っている。


 お願いだから、夕食ぐらい大人しくしていてください、と目で訴えるが、おばさんに通じただろうか?


 答えは否だった。


 そして訂正する。


 おばさんは鬼じゃない。


 青鬼も真っ青だ。


 鬼なんて可愛いものだ。


 キジや犬に負ける鬼なんて可愛すぎる。


 水野をいじめるのを生きがいにしているのかと思ってしまう。


 水野はおじさんに似ている。


 だけど、この冷ややかさはおばさん譲りだ。


 普段のふわふわが本気で怒ると一変する。


 なかなかの迫力だ。