俺からしてみれば十人並みだ。
見向きもしない相手だ。
目に付いたのは。
単に先輩に困り果てている姿が目立ったからだ。
このままエスカレートすれば泣きかねない。
だからと言って、俺が話しかけることはない。
成り行きを、見守った。
それより、鬱陶しく付きまとう女をどうにかして欲しい。
せっかく面白そうなネタを見つけたのに。
おちおち見ていられやしない。
酒が入り、その男の行動がエスカレートした。
もうセクハラで訴えられたら勝ち目なし。
水野は俯いた。
これは泣く。
そう思ったら、女を振り払い立ち上がっていた。
泣く。
そう思った。
だが、その予想は大きく外れた。
俯いていた水野がテーブルを思いっきり叩いて、先輩を睨みつけた。
そして、大きく息を吸い込んだ。
もがっ。
とっさに、水野の口を手で塞いだ。
セーフだった。