水野は一時間近く風呂に入り、さっぱりした顔とは言えないが、幾分すっきりした顔で出てきた。


 しじみの味噌汁をとりあえず出すと、うまそうに飲む。


 おかゆは少し食べただけで、味噌汁を三杯飲んだ。


 そして、薬を飲ませ、オレンジジュースを出すと、これもうまそうに飲む。



「おがゆは、もう一寝入りしてがら食べるぅ~おやずみ~」



 そう言って、俺の布団に潜りこんですぐさま寝息を立てる。


 おい、水野。


 お前、俺を召使いか何かと勘違いしてねぇか。


 ここは俺の家だ。


 人の布団を勝手に占拠するとは何様だ!


 のん気な寝顔の水野を、拳を握り全身を震わせながら俺は睨みつけた。


 おもしろいやつじゃないか、と引きつった笑いがこみ上げた。















 そして夕方五時半。


 水野は再び起きる。


 今度は顔色も良く、大きく伸びをした。



「おかゆ食べる!」



 寝起きの第一声がこれだ。


 水野は顔を洗っている間におかゆと最後の一杯の味噌汁を用意する。


 おかゆを見た途端、すごい勢いで口に入れていく水野。


 とは言っても、食べ方は上手いが、とにかく満足した様子で箸を置いた。



「ごちそうさまでした。ふぅ~食べた。さすがは榊田君!おかゆもおいしい。あ!しじみのお味噌汁はまだある?」



「……もうねぇ」


「残念。なら、オレンジジュースちょうだい」



 テーブルの脇に置いていた、オレンジジュースをコップに注いでやる。



「……これで満足でございましょうか?水野お嬢様」



 口が痙攣を起こしながらも、必死で笑みを浮かべる。


 もちろん嫌味だ。